ネタバレ御免の感想文。まだ見てない方はご注意遊ばせ。


時間は50年。空は青い。はい、ゲーム開始。
Lola Rennt <出演>フランカ・ポテンテ/モーリッツ・ブライブトロイ
<監督> トム・ティクヴァ 1998 ドイツ 10点満点!!
すごい!すごい!すごい!!!!!!

わたくしの好きな感じの映画だとはおもっていたのですが、予想をはるかに超えて、素晴らしすぎます。びっくりした。バージン・スーサイズでもびっくりしたけど、これはそれ以上!!

あまりにも素晴らしすぎて、感想がうまくまとまらないくらいなのですが、えーと、非常に実験的な映画で、「20分以内に10万マルク作らないと、恋人がj殺される!」というのが物語の始まりで、その20分間が三通り、描かれてるのね。
スライディング・ドアだっけ、朝出かける時間が15分ずれたら・・という二つの結末のグイネス主演の映画があったと思うのですが、それと似てるといえば、似てる。

でも実は、ぜんぜん違う。

この映画のテーマもオチも、実は最初の3分間で終ってるんですよね。っていうか一番最初の台詞。その時点では一体誰なんだかわからない人がいう台詞がこの映画のすべてで、そしてそれが本当にすばらしい。ドイツ哲学ってよくわかんないけど、こういうことを考えられる人種がドイツ人なら、わたしはドイツ人とはうまくやっていける!! と確信しました。カーン様、待っててね!(待ってない、待ってない。)
いや、話がそれてますが、最初の台詞というのがこうです。
「決まっていることは、ボールは丸く、試合時間は90分。あとは推測。ではゲーム・スタート!!」
といって、その人物(銀行のガードマン)がサッカーボールを空に蹴り上げる。

私の理解した限りでは、この映画は、「ローラが家を出るのが5秒遅かったり、早かったりしたら、ありえたかもしれないもう一つの結末」という単純な時間のずれによるパラレルワールドを描いたものではないと思います。
「時間は二十分、作らなくちゃならないお金は10万ドル」というルールだけがあって、他のすべては、なにごとも、すれ違う人の運命その他すべて含めて「ありえるかもしれないしありえないかもしれないこと」。

実際問題、例えローラが5秒出るのが遅かったとして、すれ違う人たちの人生があそこまで変わることはないでしょう。だから「時間がずれていたら・・」がテーマなのではなくて、「舞台設定はこういうかんじ。そしてあとは何処で何があってもおかしくない」という、運命というか人生の「ワケワカンナサ」を描いてるんだよね。
でも随所に、「運命には逆らえない」的な小技もきいてる。
ローラは、ものすごく不確定で、何があってもおかしくないという運命の不安定性に翻弄されてる。と同時に、「なにをどうやっても必ずそうなってしまう運命的な事実」というのが描かれてるのがまた、すごい。(具体的にはマイヤーさんの衝突事故、ね。)

つまりそれは、人生そのもの。
「時間は50年、空は青い。あとはすべて(人知の及ぶ範囲では)推測にしかなりえない」
ということなのですわ。

人知の及ぶ範囲では、正解なんてない。ローラは死力を尽くしているし、すべての可能性でベストを尽くしてると思う。
でもうまく行くこともあるし、うまくいかないこともある。しかもそれは彼女のやりかたがマズイとかではなく、すべて「不確定な運命のいたずら」に翻弄されているわけだし、でもどう転んでも、「確定的な運命」は、変わらない。
じゃあ運命にまかせっきりでいいのか、って言うとそんなことはなくて、かくも不安定で確定的な二律背反を含む「人生」という舞台に立たされている以上、その場その場でベストを尽くすしかない。それが人間に与えられた唯一の、でも決して絶対などではない人生の演じ方

すべて運命のいたずらに翻弄され、殺されたり恋人が死んじゃったり、もしくはまるまる10万マルク得しちゃったりするのは、結果論であって、「20分で10万マルク」というルールのあるゲームを(不可抗力にせよ)はじめてしまった以上、ローラは走る。そして走らないということはゲームをしないということ、ゲームをしないということは、人生を放棄してるということ。

ゲームって楽しいでしょ? なんでRPGにみんなはまるの? その役柄の人生を、たとえその結末が「モンスターに倒される」だとしても、ゲームとして楽しめるから、でしょ?

だから人生だって同じでしょ? そういうルールのあるゲームなんだから、楽しんで、ベストを尽くして、そしてうまくても下手でも、ハッピーエンドか、バッドエンドか、何かには必ずたどり着く。エンディングがあるのがゲームなんだから。

いや、本当に素晴らしかった。というか、もしもわたくしが映画を作ることになったら、こういう映画をつくりたかった、先をこされて本当に悔しい、と思うくらい(これは、わたくしが映画や本に捧げる最大級の賛辞なんです)、素晴らしい。

そしてまた音楽が最高。ジャーマン・テクノにはある意味妙な思い入れがあるのですが、この映画は音楽なしには語れない。
最後のエンディングがグッド・エンディングなのも、とてもよかった。シニカルで乾いた笑いを誘う映画なのに、最後はちゃんと「映画的快楽」を満たしてくれるところも、律儀なドイツ人らしい。

とにかく、蝶腸超オススメ!!

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